La Vida de Viaje

旅行や登山の記録

スペインの長大スタンプラリー、サンティアゴ巡礼を行く


大学の卒業という、人生のモラトリアムの終わりを控えた2017年1月。僕はこのまま何もせずに、モラトリアムを終えていいのかと思っていた。

世の中は「君の名は」が大ヒットし、聖地巡礼ブームの真っ只中。ふむ聖地巡礼か・・・。面白そうだな、やってみるか。でも、普通に日本の有名どころに行っても面白くない・・・。ということで、僕はもっと壮大な、キリスト教聖地巡礼サンティアゴ巡礼に行くことにしたのだった。

サンティアゴ巡礼:キリスト教版のお遍路さん

サンティアゴ巡礼について、ご存じない方も多いと思うので一言で説明させていただくと、四国の有名なお遍路八十八箇所巡りのキリスト教である。

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巡礼者の必携、クレデンシャル

クレデンシャル(Credential)と呼ばれる、巡礼者のパスポートを持ち、キリスト教の聖地であるサンティアゴ・デ・コンポステラ(Santiago de Compostela)に向けて歩くのが巡礼である。自転車や馬で行くことも可能。

昔は巡礼に宗教的な意味合いが強くあったが、現在は宗教を目的に巡礼をしている人の割合は、余り多くない。それよりも、観光的な意味合い、アウトドア的な意味合いの方が大きくなってきている。

巡礼のスタート地点と距離は?

スタート地点はどこでもよく、ヨーロッパ出身の方の中には、故郷のオーストリアから歩いてきたぜ!みたいなクレイジーもいる。スペインの国内にはいくつかの整備された巡礼路が存在し、中でも一番有名なのが下の「フランス人の道(Camino Frances)」。大体の人はこの道のどこかから巡礼を始める。

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フランス人の道(Camino Frances)、聖ヤコブの道(The way of St. James)とも呼ばれる

道の始めは、「サンジャンピエドポー(Saint-Jean-Pied-de-port)」というフランスの小さな町で、そこからピレネー山脈を超え、スペインを東から西へ横断する実に全長778kmの道のりである。全て歩くと、1日25kmあるいてもサンティアゴに着くのに30日強かかる。スタート地点は選べるので、途中から始める人もかなり多い。(僕はブルゴス(Burgos)という街からスタートした。)

また、途中で中断してやり直すことも可能で、何年かに分けてやる人もいるみたい。

徒歩と馬は最低100km歩くこと、自転車は最低200km以上走ることで、サンティアゴ巡礼の証明書が得られる。これはコンポステラ(Compostela)と呼ばれる。

費用は?

この巡礼の旅、実はとってもリーズナブル。先の巡礼者用のパスポート、クレデンシャルを持っていれば、アルベルゲ(Albergue)というホステルのような施設に大体一泊5~6€くらいで宿泊できる。また、スペインの物価は日本と同じくらい、もしくは日本より安い(特にお酒・食べ物)ので、長い旅でもそこまでお金はかからない。自炊をすれば生活費は5万円以下に抑えられる。

そんなに長く歩いていいことあるの?

日々仕事や学業に忙殺されている日本人にとってまとまった時間を取って旅行にいくことはとても難しいと思う。しかし、時間が許すのであれば、巡礼は自分の人生、自分自身を見つめ直す良い機会となると思う。巡礼で歩いているときは、ただひたすらにゴールを目指して歩みを進める以外、やることがない。そうしたシンプルな状態に置かれたとき、自分の内面を見つめ直したり、自分の人生とはなにか考えたり、普段は考えられないことを充分に考えられる時間が与えられる。今まで歩いてきた自分の道を見つめ直し、これからどういう道を歩いていくのか。この問いに「答え」はないが、考えることで人はより良い自分になれると、僕は思う。

長距離を歩くということは、普段歩いていない人からすれば意外にしんどい。何もない開放的な大地にまたがる道をただただひたすら歩くのは苦行ではあるかもしれない。しかし、スペインの雄大な自然は、疲労の溜まった足を前に進めてくれる。そして、ところどころで自然が見せる美しさは、忘れられないものとして心に残るだろう。実際に体感できる経験は何にも代えがたい。 

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ガリシア地方

 また、サンティアゴに到着した後、巡礼者には巡礼路を歩いたことを証明する証明書(Compostela)が与えられる。証明書を手にしたときの達成感もひとしお。

そして、なによりも巡礼でできる一期一会の仲間たちはかけがえのない宝物となるだろう。みんながゴールを目指して歩くので、巡礼中出会った仲間と何度も同じ宿に泊まる、ということはよくある。一人ひとりが歩くペースは異なるが、最後サンティアゴの町で、一緒に歩いてきた仲間と再開し杯を交わしたとき、本当に満たされた気持ちになるだろう。

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巡礼中の仲間たち

これから、何度かに分けて、自分の巡礼の記録をつづっていこうかと思う。